GOTHIC METAL(ゴシックメタル)の館

 「ロック好きの行き着く先は…」にて連載されたゴシックメタルを纏めて…

■ Nightwish - Once

Onceフィンランドの雄と言えば思い出すのは…、自分的にはHanoi Rocksが筆頭なのだが、それ以来ほとんどフィンランド出身のバンドなんて耳にすることもなかったんだが、メタルが市民権を得るようになってからは徐々にヨーロッパでも盛り上がっていったことで中でもフィンランドがメタル王国として君臨することとなったのだった…、と知ったのもそれほど古い話ではない。そう考えるとHanoi Rocksって特殊なバンドだったんだな、と認識を改めるのだった。いやいや、Hanoi Rocksの話はともかく、フィンランドから世界を制したバンドという意味でHanoi Rocksの存在はフィンランドのバンドは世界制覇を夢見ることが出来たのじゃないだろうか、などとも思うワケですよ。

 飛ぶ鳥落とす勢いで世界制覇を実現していったフィンランド出身のゴシックメタルバンド…否、シンフォニックメタルバンド、というべきのNightwishのターヤ在籍時代最後のアルバム「Once」にして最高傑作。このアルバムこそがNightwishだ、と自慢できる素晴らしいレベルの作品をアルバム全編に詰め込んだ傑作でして、うん、自分がこの辺聴くようになったのもこの「Once」というアルバムがあったからってのはあるな。最初の「Dark Chest Of Wonders」の複雑なアレンジとバンドの演奏力の高さとシンフォニックな楽曲とそれでいて覚えやすい哀愁ただようメロディと華麗なる歌声で、非の打ち所のないダイナミックさと繊細さを持ち合わせた楽曲で、一気に音の洪水の虜にさせられるものだ。その感動の余韻の次に間髪入れずに続けられる「Wish I Had An Angel」というメランコリックなタイトルとこれまた最高峰のシンフォニックとパワーメタルの融合作で、ターヤの華麗なる歌声で展開された後のサビ部分ではマルコの力強い野性的な歌唱力が楽曲を制圧して完璧な世界観を創造している。一体なんでこんなのができるんだ?ってくらいに完璧。マルコの歌唱力もターヤとの対比となるとより一層パワフルに聞こえるから面白い。その対抗として存在できるターヤの歌唱力は言わずもがなだが…。

 続く「Nemo」も静と動のコントラストが見事にはっきりした歌唱力を聞かせる雰囲気の曲ではあるが、その背後でのアレンジは緻密に練られているのは当然のことで、更に楽曲の持つ美しくも儚げな雰囲気がしっかりと伝わってくる素晴らしい作品。決してバラードではないのに切々と綴れるあたりが単なるメタルバンドとは異なる音楽家達。「Planet Hall」のイントロを聴いてノレないリスナーもいないだろう。更にマルコの強烈で野性的な歌声を聴いて楽曲に興味を持たない人も少ないだろう。そしてパワフルかつ繊細な楽曲アレンジについてはここでもまた驚くばかりで、これだけギターが歪んでいて目立っているにも関わらず楽曲全体のパワーが凄すぎてダイナミックさやパワフルさの方に耳が向いてしまうのだ。

 ここまでの流れが強烈なので、アルバムとしての評価がダントツに挙げられるし、そんな完成度を持った作品ってのはほとんど見当たらないもんね。聴いている方もこれは一気にハマってしまって楽しめる、と言うよりも圧倒されるという言葉の方が適切かもしれない。一息付けたのは「Creek Mary' Blood」という曲が純粋にフィンランド民謡の雰囲気も持ったバラードチックに始まる曲だから。美しいアコースティックギターで奏でられるターヤの歌声と縦笛による牧歌的にすら聞こえるムード作り…行ったことないけどフィンランドってこういうところなのかなという創造を逞しくしてしまうような音色だ。もちろん単にバラードで終わるはずもなく、バンド全員の音が入ったクサクサの展開に進むのだが、単にクサいということはまずあり得ないので楽しんでほしい。何故なら終盤では思いがけない展開にどんどん進んでいく曲だし、それでいて8分半あるのだから一大叙情詩とも言える大作ですよ、これ。自分たちの音をしっかりと主張しながら大作に於いても飽きることない作りをしていて、演奏はとんでもなく上手いので更に楽曲が昇華されるってもんでしてね…、いや、凄い。

 続く「The Sire」はアルバム内ではちょっと異色な横ノリな感じの美しい楽曲で、Nightwishの深みを感じさせるが、その後の「Dead Gardens」はアルバム初頭に組み込まれていてもおかしくないくらいのパワフルな曲で、またまたクラクラさせられるくらいに圧倒されるが、ややシンフォニック要素を抑えているのかな。「Romanticide」も同様だけどちっとだけギターが目立つようなパワーメタル。ただ、やっぱりコーラスワークとかでNightwishらしさっては出てくるし、一辺倒では進まないアレンジの深さも見事。こういう深みが普通のバンドとは明らかに異なる凝り性なトコロで、余計なものが展開されるというのではなく曲の流れに必要だから展開していくという自然さが見事。いや、素晴らしい…。そしてまたしても大作「Hoast Love Score」だが、今度は最初からハードに攻め立ててくるもののやはり展開が多様で、ツォーマスの鍵盤が圧倒的に活躍している見事なもの。ただ、やや散漫な印象を与える部分がある気がするが、それも些細な印象。とにかく詰め込んでみましたという濃い〜楽曲のひとつで、これもまたNightwishの楽しみ。これを聞き終えると相当ぐったりしてきます(笑)。それを察してか「Kuolema Tekke Taitelijan」というフィン語での曲は静かにシンプルに癒してくれる楽曲です。こういう繊細さも見事だなぁ〜とつくづくNightwishというバンドの底力を感じる次第ですな。アルバム最後は同じく静かめの楽曲「Higher Than Hope」で締めてくれます。もっとも後半はヘヴィメタルなバラードの展開をするけど、それでも疲れた耳を癒してくれるには十分な美しさを持った曲。

 いや〜、疲れるアルバムですなぁ、「Once」は。結構車でも流していたり家でも流していたりするので慣れているつもりだったけど改めてじっくり聴いていると「Once」の名盤さ加減に惚れ惚れする。こんなに完成度が高い作品をリリースし続けているバンドってそうそうないから今後も追いかけ続けるだろうなぁ。未聴の方は是非試して下さい。濃い〜世界を楽しめます♪



■ Nightwish - Made In Hong Kong Nightwish - メイド・イン・香港

メイド・イン・香港(DVD付) 新ボーカリストであるアネット嬢を配してからアルバム「ダーク・パッション・プレイ」をリリース、その反応も冷めぬままに世界中に新しいナイトウィッシュを見せようと結局40カ国152公演というワールドツアーを終了したようだ。その記念品としてか、アルバム「ダーク・パッション・プレイ」を中心とした=要するにアネット嬢の歌による新生ナイトウィッシュのイメージを展開するという意味だろうけど、そのライブEPみたいなものをリリース。ジャケットもちょっとらしくないってのもあってやっぱEPという位置付けなんだろう。

Nightwish - メイド・イン・香港 メイド・イン・香港

Nightwish - ダーク・パッション・プレイ (リミテッド・エディション) ダーク・パッション・プレイ

 「メイド・イン・香港」。何で香港?わからんけど、ワールドツアーの象徴なのだろうか?それともフィンランドからは対極に位置する場所まで行ったということから出てくる何かの証明か?まぁ、いいけど、同じアジア人としてはどうせなら「Made In Japan」の方がかっこいいじゃないか、などと思ってしまうが(笑)。いや、それはともかく、全11曲収録ながらも香港を中心としたライブパフォーマンスを収録したのが最初から8曲入ってて、それからシングル曲のおまけなど、そして最後はその前にリリースしたレアテイク集EP「The Sound of Nightwish Reborn」にも未収録だったデモバージョンを入れてあるという、まぁサービス的なアルバム。

 もっともライブパフォーマンスについてはオーケストレーションやら効果音やらとスタジオの音を再現するためにコンピュータ系を使用しているので、大幅に何かが変わるというものでもなく、スタジオ作品に近いが、やはりアネット嬢のライブパフォーマンスでの歌の人間臭さというのか、ライブ感というのか野性味というのが生きていて、躍動感溢れる姿が見えてくる。ベースのマルコ・ヒエタラの野獣声がそこに被ってくるので更に生々しいバンドに聞こえてくるので、これまでの完璧な音世界を構築していたナイトウィッシュからは少々趣の異なった躍動感溢れるライブバンドの姿を聴ける。良い悪いで言えばやっぱり相当良いライブアルバムでしょ。ちと楽曲の少なさが物足りないけど、まぁ、ターヤ時代の音は封印していくのかもしれんな。

 数年経ってからようやくファンがターヤではないナイトウィッシュの音に慣れてきてバンド側も積極的にそういう作品をリリースしているので多分次はDVDも出てくるんじゃないか?今回の「メイド・イン・香港」でもボーナスDVDにはプロモばかりと生々しい姿を追ったドキュメンタリーが入っているので、ライブを纏めたDVDを待ち望みたいね。かなり硬質な印象だったナイトウィッシュからアネット嬢の加入でソフトで愛らしいバンドに変化した大御所。そろそろ次回新作の音を期待したいねぇ。



■ Nightwish - Dark Passion Play Dark Passion Play - Nightwish

ダーク・パッション・プレイ  「ダーク・パッション・プレイ」  最初から14分にも渡る大曲で、これがまたキャッチーなメロディも押さえているので全然聴きにくいとかはなくって音が出てくると、それだけでナイトウィッシュの音、ってのが明確にわかる。こんなにバンドの音がわかるっつうのもなかなかないので、その新鮮さに驚いた。そして、そしてアネット姫の歌声…。

 うん…、やっぱターヤ嬢はとんでもなく凄かったんだ、と実感。アネット姫の歌声はあまりにも普通過ぎてナイトウィッシュの強烈なオーケストレーションと様式美を打ち出したサウンドの洪水に完全に食われている…。ターヤ嬢だったらこれも凄くかっこよいアルバムに仕上がってただろうなぁと思うくらい楽曲のレベルと音楽は素晴らしいもので、75分フルにその音世界を創り上げてくれてるもん。それだけに歌の弱さが露呈してしまって、なかなかこれでファンを納得させるのは難しいんじゃない?ま、認めるしかないんだろうけど、アルバムとしては悪くないのだけは云える。相変わらず激しくて美しい世界だしね、好みは好み♪



■ Nightwish - End of An Era End of an Era (Live at Hartwall Arena) - Nightwish

End of an Era  女性ボーカルによるヘヴィメタル…っつうか今の言葉だと何て言うんだろうな、ゴシックっつうのだけではないと思うが、まぁ、いいや、ヨーロッパにはそんな様式美を売りにしたバンドがわんさかあるみたいで、一時期それらのバンドを幾つか漁って是非ヨーロッパの構築美と激しいハードロックの素晴らしさを楽しんでみよう、と思ったのだが70年代プログレ慣れした耳にハマり込むサウンドっつうのはなかなか多くはなかった…と言うかそんなにたくさん探せなかった、という方が賢明か(笑)。まぁ、それでもフィンランドって国のメロディには結構惹かれるものがあったのでその辺で…なんて探していたら、その筋では超メジャーなナイトウィッシュというバンドに当たることになる。

 1999年デビュー、かな。見事に様式美と女性ボーカルによる構築美型ヘヴィメタルサウンドにどこかオペラティックな唄法が入り込んで来ていて、またどこかケルティックな雰囲気も持っているっつう…、フィンランドだからヴァイキング的な方がまだ近いような気もするんだけど、まぁそんなのもあるんだな。女性ボーカルだけでもなくて部分部分ではオトコのボーカルが絡むというのも雰囲気をドラマティック化しているようで面白い。

エンド・オブ・アン・エラ そんなことなのでアルバム的に何を聴いたらいいのか、っつうのもよくわからずに探して聴いていたのでまだどれが凄く良いとか比較論的には語れないのだが、ついこないだ看板ボーカルのタニアがクビになったってことで、その最後のライブを収録したライブアルバム「End of an Era」とDVD「エンド・オブ・アン・エラ」がリリースされているので、ま、これなら当然ベスト盤に近い選曲なのだろうということで聴いてみたのが当たりだったかな。もの凄い熱気というか熱いライブが詰め込まれていて、演奏も歌も観客もそして場所的にも地元ってことで気合い入ってて最高に素晴らしいライブに仕上がっている、と思う。ナイトウィッシュというバンドの集大成がここにあると言われているし、聴いてみてもああ、こういうバンドなんだなぁ、凄いなぁ、ってのがわかるしね。そして終盤の盛り上がりでは「Over the Hills Far Away」ってゲイリー・ムーアのカバーで、これがまた滅茶苦茶かっこよい仕上がりになってるしね。

 しかし最近のバンドは実に楽曲レベルが高い。構成にしても普通じゃ覚えきれないような構成だし、アレンジももの凄く凝ってて、これが普通っつうとなるとかなりハイレベルだよな。テクニックにしても相当なもんだし、基礎音楽教育がきちんと受けられているんだろうな、きっと。だから単にロックだぜ〜って感じは全くなくって知性を感じるもん。ああ、だから好きなのかもしれないな。そんなことで好き嫌いは分かれると思うけど、ヨーロッパを制したバンド、さすがですナイトウィッシュ



■ Nightwish - Wishmaster Wishmaster - Nightwish

Wishmaster   現在ではマルコ・ヒエタラがベーシスト兼ボーカリストとして君臨しているナイトウィッシュ。新ボーカリストの存在も全世界にツアーをしたことでしっかりアピールできて、割と受け入れられている感じだね。まぁ、今更ターヤに戻せ〜っても無理だろうから、それも良いか。現役バンドだしさ。音はかっこよいし。ってなことで、ナイトウィッシュを取り上げてみよう。どれでもよかったんだけどパッと手に取ったところで…。

Wishmaster」2000年リリースの飛躍作とも言うのかな。正直言って無茶苦茶かっこよいツボを全部押さえてくれます(笑)。ギターリフの新鮮さはこのバンドの特色かもなぁ。目立たないギタリストなんだけど、リフメイカーとしては結構センス良くて、どのアルバムでも必ず「ハッ」とするようなギターリフが入っていたりして、このアルバムでは冒頭二曲のギターリフがもの凄くかっこよい。そういうギターリフが山のように詰め込まれているアルバムかもしれない。それと割と常識を覆すような楽曲のリフだったりするものも多くて、「Wanderlust」とか「Crownless」なんてのはこんなのあるのか?ってくらいのリフで攻め立ててくるしさ。鍵盤のツォーマスの才能はそこかしこで溢れ出ているので今更書くこともないけど、ホントに叙情的な、そしてハードなセンスに長けている音楽家という感じでそれをメタルで表現しているというのかな、ただひたすらかっこよい。このアルバムでは捨て曲なんてのはなくってね、最初から最後までリフと壮大なアレンジが練られたオーケストレーションとオペラチック名声によるある意味異色なメタルの世界を繰り広げてくれる傑作。

 このバンドって相当歴史に残るバンドだろうなぁ…。いやぁ、出会えてよかった。ブログとかやんあかったら出会えてたかどうかわかんないしさ。まぁなんだ、このバンドの弱点ってジャケットセンスくらいか(笑)。以降のアルバム群も音的にはどんどんレベルが高くなっている感じで「Once」でひとつの終演を迎えることは有名だね。うん、素晴らしい。



■ Tarja Turunen - What Lies Beneath (2010) What Lies Beneath - Tarja

What Lies Beneath Nightwishを脱退してからアルバム「マイ・ウィンター・ストーム」をリリースして、それは歌手ターヤの側面が強くてもう聞けないであろうNightwishのあの豪勢なアレンジにようオペラチックなターヤの歌声を…という願いは到底叶うものではなかった。ライブなんかを聴いているとそれらしい曲があったりNightwishの曲をやっていたりするので決してHR/HMがキライになったワケではないみたいだけど…。

 そんな心配をしながらもうターヤは歌手として、普通に歌っていくことを中心とするのかななどと思っていたトコロに新作リリース。まだ出たばっかりだから深追い出来てはいないけど新作「What Lies Beneath」では結構バラエティに富んだ曲を歌っているという印象。相変わらずあの歌は健在でしてね、まぁ、Nightwishのような曲はないんだろうけど、それでも「Little Lies」や「Dark Star」とかはあの頃を思い出させるような雰囲気のメタルを展開しているし、楽曲中ほとんどは歪んだギターと重いドラムで攻め立ててくれるのは嬉しいな。もちろんあの歌声によるオペラチックな楽曲も入っているのでしっかりと世界を出しているのは当然か。また、何人かのミュージシャンを迎えてのセッションもいれていて、アルバムに変化を付けているんだけど知ってるのはジョー・サトリアーニくらいかなぁ(笑)。しっかりとソロを弾きまくってて楽曲とは全く異質な世界になってるけど。

 ターヤって多分やりたい音楽って二種類あるんだろうな、と「What Lies Beneath」を聴いていて思った。中途半端なのはないからやっぱりパワーメタル的なのかオペラティックに歌を聴かせる静かなものか、っていうもので、どちらも申し分ないんだけど、そこにはキラーソングってのもがないのがネックか。その辺がNightwishのツォーマスの才能だったのだろう。どこかで何かキラーチューンを見つけないとこのままただ知名度のある歌手として存在しているだけになっちゃう…。

 その「What Lies Beneath」という作品、アマゾンをチラリと覗くだけでも三種類のジャケットがあってよくわからんが、いつも色々なジャケットで出してくるのも戦略だな。しかし…センスイマイチ(笑)。そういえばデラックス・エディションにはWhitesnakeの「Still of the Night」のカバーが入ってるけど…、いまいちなカバーだな…。



■ Tarja Turunen - My Winter Storm My Winter Storm (Bonus Track Version) - Tarja

My Winter Storm 元ナイトウィッシュの看板ボーカリストだったターヤのソロアルバム。かなり本気で取り組んできたソロ作品で、冬らしくタイトルも「My Winter Storm」ってなもんで、ジャケットに映し出されたターヤは一体誰だこれ?ってな感じに綺麗に写っていて驚く。まぁ、雰囲気はしっかりと雪の妖精ってな感じで良いのだけどね。

 そして中身。これがまたナイトウィッシュの時の躍動感溢れるメタル作品とは打って変わってしっとりとした歌を聴かせるアルバムっていう雰囲気が多く、トゲトゲしさは鳴りを潜めているってトコか。何曲かは歪んだギターをバックに歌っているけど、それでも全然ヘビメタ感はないね。かといってポップスってもんでもなく、歌モノ、っていうアルバムでしょ。最初のシングルにもなった「I Walk Alone」なんて極上のヨーロッパ的メロディと彼女の高音域を生かした作品で素晴らしい歌。以降中盤まではず〜っとそんな感じでしっとりと聴かせる歌ばかり続き、雪の夜に聴くには丁度良い加減を演出してくれる作品だ。8曲目の「Die Alive」が若干ハードなアレンジに仕上がっているのでロック的ではあるけど、それでも硬質な印象ではなく、ちょっと派手な歌にしたいっていうところからメタル的アレンジが用いられているというところだ。そしてまたピアノをバックに歌い上げる曲が多く、彼女が自分で弾いているものもあるのだが、大人の雰囲気だねぇ。

 ジャケットの雰囲気を裏切ることのない作品だけど往年のナイトウィッシュ的な曲を期待すると全然裏切られる作品なので注意、ってトコ。個人的にはこれでターヤの実力が別の世界にも知らしめることができたのかなって思うけどね。ここから大成していくかどうかは難しいだろうけど、こういう実力派なら認められるんだろうな。そうすると「昔ヘビメタ歌ってました〜」なんてさらりと云えちゃうのかな(笑)。



■ Tarja Turunen - Henkays Ikuisuudesta

Henkays Ikuisuudesta フィメールゴシックメタルバンドの代表格でもあるNightwish、その看板でもあったボーカルのターヤ姫が昨年脱退し、バンドは既に新たなるボーカルを据えて活動再開しているトコロで、これもまたなかなかよろしい様子なのだが、一方であれほどのオペラティックな歌声を聴かせてくれていたターヤ姫の行動の方が気になって、ちょこっと追いかけてみると…。

 こんなソロアルバムが出ているみたい。2006年の作品だから脱退してすぐにレコーディングしたのかな。Nightwish在籍中の2004年にも「Yhden Enkelin Unelma」っつうシングルをソロで出していて、この作品でもしっかりとストリングをバックにしっとりと歌い上げるモロに美声を聴かせるクラシックオペラ作品そのものだったんだけど、アルバム「Henkays Ikuisuudesta」も出ていたので聴いてみた。

 かな〜り驚いた。Nightwishのあの活動と歌は何だったんだ??このソロアルバムではメタル色なんてゼロ。ロック色すらゼロ。完全に歌を聴かせる作品になっていて、オペラ調の歌ももちろんあるし、しっとりと歌い上げるバラードやポップス系の曲ばかりで、しかもジョン・レノンの「Happy Xmas」とかもカバーしてるし、とにかく歌を聴くならコレを聴けと言わんばかりの素晴らしく美しいアルバムに仕上がってる。Nightwish時代とは雲泥の差があって、なんであんなハードなのやってたんだろ?って思うよ、これは。そしてこのソロ作品だけだって相当のレベルで市場に広がるべきだと思うテンションだしさ、いやぁ、やっぱ上手いっつうかプロっつうか、凄い。音楽の基礎がしっかりできてないと無理だろうし、もうしっかりとアーティストの真髄が出ている凄い作品。一般の人はここから聴いて、Nightwishで驚く方が良いかもしれないな。うん、いいもの聴けた…。完全に歌モノ作品なので初心者でも全然OKです。というか普通に聴いた方が良いと思う作品。

 普段メタルばかり聴いている人には全然興味のない作品かもしれないけど、こういうのとメタルが融合してNightwishの音だったんだよな、ってう確認にはなるし、やっぱりターヤ嬢の凄さは実感できるね。



■ Tarot - Suffer Our Pleasures

Suffer Our Pleasures マルコ・ヒエタラって人の野性味はどこまでも人を惹き付けるんかね。しかし本人がずーっとやってるバンド、タロットはそれほど注目を浴びていなかった、と思う。マルコがナイトウィッシュとかで売れてから後追いで発掘する人は多かったと思うけど、当時、1986年頃から注目してた人って少ないんじゃないかな。当時メタル全盛期だけどフィンランド産メタルで世界に出てくるってのはなかったしね。そんな中で一線でやってたバンドだったのがヒエタラ兄弟のタロットなワケだ。

 今回は2003年にリリースされた「Suffer Our Pleasures」というアルバム。ナイトウィッシュにはまだ加入していない頃だけど、結構良いアルバムでさ、古き良きヘヴィメタルの世界が広げられている感じだけどしっかりと最近の鍵盤もクローズアップされていて、美味しいところ取りができている感じ。最初の「I Role!」からマルコの野性的な叫びが入って凄くかっこよく展開されていく曲。音的には元祖のメタルなんだけどメロディセンスが優れているのかな。優れているというかメロディがしっかりとあるってのがフィンランド。聴いてみれば凄く納得できるアルバムなんだけど聴こうって気になるまでに時間がかかるんだよな。なぜか。

 派手じゃないけど結構コンスタントに活動していて、最新作は2006年「Crows Fly Black」。いずれ全部聴いてみたいバンドだなと頭の中で記憶はしているものの、見つからない。ま、気長に探すさ(笑)。ん〜、やっぱ聴いているとかっこよいなぁ…。ただ何かが足りないのは何だろ?



■ Tarot - Gravity of Light

Gravity of Light ヨーロッパ方面にも話が及んでしまったのでついでながらまだまだ無名だろうと思われるバンドの新作紹介…、ただしキャリアはRattとさほど変わらないくらいの長さを誇るし、フィンランドではヘヴィメタルの草分け的存在としても名高い、らしいバンド、Tarot。知る人ぞ知る、というトコロなんだが、Nightwishに参加しているベーシスト兼ボーカリストのマルコ・ヒエタラがそもそもシーンに出てきた時のバンドです。この人、その実1966年生まれなので相当キャリアを積んだ強者でさ、Nightwishなんて若いバンドなのに、と思ってたけどこういうところで才能とキャリアを開花させて古巣に恩恵を与える、みたいな仕事人的なトコロもなかなか男臭くてよろしい(笑)。

 そんなマルコ・ヒエタラのバンド、Tarotの何枚目だろうか?ついこないだ出た新作が「Gravity of Light」で、Nightwish効果も当然あるのだろうが、フィンランドのチャートで1位を獲得したとか…。日本じゃあり得ない話だけど、そこはメタル王国フィンランド、そんなこともあり得ると言う面白い状況。もちろんメンバー全員で喜んでいてツアーをしていて、また今度秋頃からツアー漬けなんじゃないかな。Nightwishの方がボーカルのアネットさんの産休状態だから今年はTarotで暴れようってことなのだろうよ、マルコ・ヒエタラさん。他のメンバーって普段Nightwish活動中ってどうしてるんだろ?そんなにマルコの都合に合わせて動けるものなのだろうか?不思議だ。

 それはともかく、Tarotと言うバンド、最初の頃からそうなのだが、思い切り黒魔術的なヘヴィメタルというカテゴリの枠に収まる王道の悪魔主義的サウンドを主張していて、今に到るまでそのポリシーは変わることなく貫かれているというのも素晴らしい。だから聴いているとブラック・サバスやオジー・オズボーン、はたまたロニー・ジェイムズ・ディオ的な印象を強くもつ。ちょっと揺れる曲になってくるとユーライア・ヒープの雰囲気も感じるし、今の時代ではあまりここまで正当なへヴェメタルを聴くことも多くないので、傑出した存在ではある。軽さは無縁でして…、とにかくマルコ・ヒエタラのパワフルで重い歌声が魅力的だが、バックのバンドもツワモノ揃いで演奏は見事に上手いの聴いていて心地良い。「Gravity of Light」に弱点があるとすれば楽曲の良さ、ってところだろうか(笑)。いや、ちとマンネリ的と言うのかメリハリが弱いというのか、レベルは高いしグイグイと引っ張られるんだけど、途中からちょっと辛くなる。でも、多分若かったら代上部なのかも(笑)。それをさ、結構な歳の人間が演奏しているってすごいよな。

 だから「Gravity of Light」の音の方は粘っこい〜し重い〜し、大音量で聴いていると凄くハマるんだ、これ。王者の風格ってのかな、揺るぎない自信が漲った作品で、さすがはマルコ・ヒエタラと言う雰囲気が良い。今更新しいものを…なんて人も多いけど、LAでRattとかスコピが売れてる頃にフィンランドで同じようなことをしていたバンドって見方するとちと変わるかも。そして今の時代でもしっかりとシーンを見据えて出してくる音ってのも才能か。いやはや流石にマルコ・ヒエタラさん、素晴らしい♪  ん?今アマゾン見てて思ったが、これから発売なの?フィンランドでは3月頃にリリースされていたらしいけど…、自分もさっさと聴いたから今更何で?って感じだけど…、その分世界レベルのリリースが予定されているってことだろうか。

Tarot - Live @ Earth Live @ Earth Tarot - The Magistate The Magistate



■ Northern Kings - Rethroned

リスローンド そんな中で結構何度も聴き直して面白さを堪能しているアルバムのひとつでもあったノーザン・キングスの一作目「リボーン」はもちろんカバー作品というのもあって、楽しめた。アレンジの大胆さに驚いたのと曲そのものがかなりかっこよくアレンジされていたからというので、iPodで普通に流れてもわかりやすかったからかな。iPodって適当にシャッフルで流してることが多いからさ(笑)。

 そのノーザン・キングスの二枚目「リスローンド」がリリースされたのには驚いた。一時期のプロジェクトだと思ったので、まさかセカンドアルバム「リスローンド」が出るとはね。ところが主役の四人のボーカル達は皆仲が良いんだね。一緒にツアーもやりたい、ってくらいにマジメに取り組んでいるらしくて、もしかしたら実現するかもしれない。フィンランド人って結構堅気な性格なんだろうか。そう考えると確かにそんな気がする…。いい加減の極地だろうと思っていたアンディ・マッコイですらやっぱマジメ…なんだもんな。

 さて、その「リスローンド」だが、今回は

  • 1. Training Montage (Vince DiCola; “Rocky IV” soundtrack)
    2. Wanted Dead Or Alive (Bon Jovi)
    3. Kiss From A Rose (Seal)
    4. Nothing Compares 2 U (Sinead O'Connor)
    5. A View To A Kill (Duran Duran)
    6. My Way (Frank Sinatra)
    7. Strangelove (Depeche Mode)
    8. Take On Me (A-HA)
    9. I Should Be So Lucky (Kylie Minogue)
    10. Killer (Adamski feat. Seal)
    11. Roisin Dubh (Black Rose): A Rock Legend (Thin Lizzy)

という感じでして、さすがにヨーロッパで売れていたSealの曲とかはあんまり知らないので、笑えないんだけど、その他は相変わらず恐ろしいアレンジによって見事に生まれ変わった楽曲群になっているのが凄い。 ボン・ジョビのなんてバラードじゃないし、デュラン・デュランだって、ここまで気合いの入ったかっこよさなんてあるか?ってくらいかっちょよく疾走してるし、かと思えばシニード・オコナーのはソナタ・アークティカのカッコさんがここまで熱唱するかってくらいのバラードを歌い上げてるし、かと思えばシナトラの「My Way」も何故に入っているのか、情感たっぷりに歌ってます。もちろんバックはメタル(笑)。そしてデペッシュ・モード…意外とこのバンドの曲は重金属アレンジになってもそれほど曲の骨格が変わらないので、ナイスなカバーとして聴ける。うん、だからデペッシュ・モードって好まれるんだろうな。そして恐るべしアレンジの「Take On Me」。何かわからなかった(笑)。4人のボーカルを回しているのでかなり楽しめるけどね。同じくカイリー・ミノーグも何故にこうなる?ってくらい恐ろしいアレンジに変化しまくってる。シールのカバーはよくわからんけどかっこよいなぁ〜って。そして最後には最も期待したロックナンバーの「ブラック・ローズ」。いやぁ〜、ロック調を思い切り民謡にしてしまっているけどあのギターソロとかは完全にコピーしたさすがの一曲。シン・リジィ以上にかっこよくはできないと踏んだのか、全く別の切り口によるカバーはさすが。

 な〜んて感じですが、やっぱり個人的にはマルコ・ヒエタラの野獣声が一番好きですな。こういう所でどんどん発散してあの野性味のある声を聴かせて下さいって感じだ。



■ Northern Kings - Rebone

Reborn さてさて、このアルバム「Reborn」自体は昨年リリースされていたらしいけど、この人達そんなにヒマじゃないだろうからっわりと根気よく参加できる時間と睨めっこして作ったんだろう。ナイトウィッシュのベース兼ボーカルのマルコ、ソナタ・アークティカのボーカリスト、トニー・カッコなどなど。みんな仲良いかどうか知らないが正に北欧の王達と呼ばれるに相応しい面々で彩られた作品。そして歌われている中身は80年〜90年代にヒットした曲ばかりで、どれもこれも聴いたことのある、もしかしたら滅茶苦茶好きで、知っている曲ばかりなのだが、それが全く別の曲として、正に北欧メタルバージョンとしてカバー…と言うのか、歌メロ以外は全部独作だろう、ってなくらいにぐちゃぐちゃにされて収録してある。いや、ほんとに何これ?ってなモンで、ハードロック系統のものならばまだしもポップス系列のものまで北欧メタルなので素晴らしく驚く。

ライオネル・リチオの「Hello」なんて、「おい!っ」てなくらいだし、レディヘの「Creep」だって「は?」ってな感じで…、ボウイの「Ashes To Ashes」だって原曲のリフはどこだよ?みたいなもんで、ジェスロ・タルなんてこんなにヘビメタになるのか?って感じでビリー・アイドルのヒット曲「Rebell Yell」だって、原曲忘れたぞ、これ、思い出せないくらい無茶苦茶になってるぞ?って感じで、とにかく面白い。単純なカバーアルバムとして捉えるよりも、ゆとり、だろうね、こういうのは。

 ってなことで、冗談みたいだけど時代が流れるとこういうのもアリってな感じでいっぱい出てくるから楽しみは増える。これから90年代のロックなんてのもそのうちこうしてカバーされるようになっていくんだろう、きっと。